計画停電の対策は自動車用バッテリで

2011-03-22

2011.3.11の東北地方太平洋沖地震の後、関東地方では計画停電 (輪番停電)が実施されている地域があり、3時間も懐中電灯でしのぐには大変不便。そこで、計画停電に備えて自動車用バッテリから電源を取る準備をされてはどうでしょうか。

電気がある時間帯は、充電器で自動車用バッテリにDC12Vを充電しておき、停電になるとDC12VからインバータでAC100Vに変換して蛍光灯などAC100V電源を使うという計画。しかし、自動車用鉛バッテリは扱いを誤ると大変危険なのです。
筆者は、昔アマチュア無線をやっていた事もあり、屋外で自動車用バッテリから電源を取るのには慣れていますので、注意点などご紹介します。

自動車用バッテリ(国内車種用)の型番は 55B24L のように表記されています。最初の「55」は、バッテリの性能・容量を表し55は 36Ah の容量があります(数字は容量と一致しないが大きい方が良い)。36Ah は、36A で1時間の容量があるという意味。「B」はバッテリのサイズを表し 幅(短手方向) 129mm、高さ 203mm となります。「24」は長さ(長手方向) 240mm で自動車のバッテリトレーに空きスペースがあれば、サイズを若干大きくする事が可能。「L」は、端子を前に見た場合に左側にマイナス(-)があり、「R」は右側という意味です。

20110321_000

こちら 【車・自動車のバッテリー】を交換する前に、知って得する情報 より引用

停電対策にバッテリを新調するのもモッタイナイので、自家用車をお持ちの方であれば、自家用車のバッテリを容量アップした新品に交換(例えば 40B24L を 55B24Lに交換)して、古いバッテリを停電対策に利用してはどうでしょうか。

しかし、自動車用バッテリを家庭で扱う場合は、以下の事に注意しなければなりません。

[1] 希硫酸
電解液は希硫酸が使われていますので、電解液をこぼさないように注意する。もし、手に付いたり、こぼれた場合は流水で洗う事。衣服に付くと数日でボロボロになります。自動車に搭載されていたバッテリを流用する場合は、良く洗ってください。また、決して倒さないように注意してください。

[2] 水素爆発
自動車用バッテリは開放型となっており、充電中は水(H2O)が電気分解されて酸素(O)と水素(2H)の気泡が発生します。閉めきった部屋で長時間充電すると、火気で水素が爆発する事があり、爆発すると希硫酸が飛び散り大変危険です(過去に経験済み)。

[3] 補水レベル
開放型バッテリは、充電による電気分解、又は自然蒸発により希硫酸の液面が減少します。液面が Lower より上、Upper より下になるように補水してください。Lower より下になると電極が空気に触れて劣化、Upperより上になると希硫酸が吹きこぼれる事があります。補水は、蒸留水又はバッテリ用補水液を使ってください。水道水はダメです。バッテリ強化剤はほとんど効果が期待できません。

※密閉型バッテリは、液面が見えない構造ですが、もしも、液面が減少してしているのが判ったら、同様に補水した方が良い。

[4] 過充電・過放電
開放型バッテリは、過充電には強いですが過放電には弱くなっています。保管する場合は、必ず満充電してから保管してください。過放電状態で放置すると、鉛の電極に硫酸(H2SO4)が結合して電極に結晶(サルフェーション)が発生します。電解液が薄くなり、充電しても希硫酸に戻らなくなってしまいます。

※古くなったバッテリは、パルス充電器(デサルフェーター)である程度復活させる事ができます。電子工作が好きな方は、過去記事 バッテリー パルス充電器(1) ~ (8) をご覧ください。

[5] 電圧変動
端子電圧は、12V ですが充電中は15V程度まで上昇する事があります。12Vの電子機器を接続する場合は注意が必要です。また、充電器ではなく、12V のACアダプタ等でバッテリに充電しようとすると、バッテリ端子の方が電圧が高くなり、電流が逆流してACアダプタが壊れる事もあります (逆流しないように整流用ダイオードを入れるなど対策が必要)。

[6] ショート
自動車用鉛バッテリは、大電流(例えば12V 50Aとか)が取り出せるのも大きな特徴で、端子を誤ってショートさせると火花が飛び、そのまま放置すると銅線が真っ赤に過熱して溶ける (これも過去に経験済み)。被覆が燃え、火災になる事もあるので注意してください。配線は、できるだけ太い線材で短く配線します。できれば、10A とか 20A の自動車用ヒューズを入れておく事をオススメしたい。

[7] 寿命
自動車用バッテリは一般的に3~5年で寿命と言われています。通勤等で毎日充放電している場合は寿命が長く、サンデードライバなどバッテリが放電状態で長く放置される場合は、更に短くなる。バッテリが寿命になると、充電容量が減少したり、内部抵抗が高くなり大電流を流せなくなります(セルモータを回している時に7.5V以上ある事が目安という説もある)。

※1ヶ月以上車に乗らない場合は、バッテリ端子を外しておくと放電を避ける事ができます。ただし、バッテリ端子を外すとECU(エンジン制御コンピュータ)のメモリが消去されるので、学習させる必要がある。

[8] 充電電流
充電は、(+)端子に充電器のプラス(赤)、(-)端子に充電器のマイナス(黒)を接続する。バッテリ容量の1/10以下の電流で10時間充電するのが目安。55B24Lの場合、36Ah なので、12V 3.6Aで10時間放電する容量がある。充電は、3.6A以下で容量に達する時間+αまで充電します。また、充電によりバッテリの温度が上昇すると劣化するそうですが、これはあまり気にしないでも大丈夫。急ぎの場合は、10A で3~4時間で急速充電する事も可能です。

どうでしょうか、注意点を書いていても嫌になってきました。小さな子供さんのいる家庭では無理ですね。バッテリをベランダなど屋外に置く事ができると良いですが、配線が長くなると、ショートする可能性があり、これも危険です。

バッテリに配線するには端子を接続する必要がありますので、バッテリのサイズにあった端子を接続して、DC-ACインバータを端子に接続するか、シガーソケットを端子に接続して、これに接続すると便利です。充電器はワニグチクリップが付属しているので、充電する時に端子を挟めはOKです。

最近の充電器(メルテック PC-200など)は、効率の良いスイッチング電源を採用しており、マイコンで電圧・電流を監視をして自動的に充電を終了し、トリクル充電するものもある。Amazonのレビューでは満充電にならないで終了してしまうそうですが・・・

バッテリにDC12V仕様の蛍光灯や作業灯を接続するのも良いのですが、バッテリのDC12VをAC100Vに変換するインバータを接続するとAC100Vの機器が使えます。但し、ここで注意したいのは、正弦波と書いていない安価なインバータは、蛍光スタンド等を接続するのは良いが、地デジTVやPCなど電子機器が正常に動作しない場合があるそうです。電動工具を接続して故障したというレビューもあるので注意してください。

またAC 100Vに接続する機器の消費電流にも注意がいる。55B24Lの場合、36Ah なので、7.2A で5時間の容量が期待できる。12V 7.2A で 86.4W であるが、100V の変換効率を70% とすると 60W で5時間動作できる計算だ。
例えば、地デジTV TOSHIBA 19RE1 は、定格57W なのでぎりぎり使えそうだが、停電中に地デジを見るには、実はこれだけではダメで、アンテナにブースターが入っている場合など、そもそも電波が受信できない。このあたりも良く検討して、計画停電に備えてください。

最後に、30年以上前に自作した充電器を紹介しておきたい。

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14.5V 2.7Aのトランスを全波整流しただけの充電器です。白く見えるのはセメント抵抗で、充電電流を下げる時は、この抵抗をワニグチクリップでショートして0Ω~2Ωに変更します。電圧計と電流計が付いているので、バッテリの状態を監視しながら充電する事ができます。
トランスや整流用ダイオードは、昔流行ったテーブルゲーム機(コナミ製)の廃材から部品取りしたもので、電圧計、電流計以外の部品は全てタダです。これを接続したままセルモータを回すと 5A 以上供給する能力がある。 こんな単純な充電器が一番壊れにくいし信頼できる。

適当なトランスが入手可能であれば、充電器を自作しても良いと思います。但し、バイクの密閉型MFバッテリは、定電流で電圧も制御してあげないとバッテリを痛めてしまいますので使用してはいけません。

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